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電子書籍 光の闇

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電子書籍-光の闇
著者: 佐伯一麦
定価 ¥1,439(税込)
BOOKFANポイント: 79 pt
or
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商品情報

出版社名
扶桑社
eBookJapan発売日
2013年08月23日
対応デバイス
Windows  /  Mac  /  iPhone  /  iPad  /  Android  /  ブラウザ楽読み
電子書籍のタイプ
リフロー型
ファイルサイズ
595.2KB
連載誌・レーベル
扶桑社BOOKS
関連タグ
小説・文芸  /  扶桑社BOOKS
平均評価
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ブクレポ
2件

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光の闇 OFF
佐伯一麦 OFF

内容紹介

電気工をしていた20代にアスベストの被害で肋膜炎にかかり、以後、喘息の持病を抱えながら作家活動を続けている、私小説作家・佐伯一麦氏の連作短篇集。
アスベスト被害で著者自身のなかに、肉体的欠損感覚が存在している。
そのことを緒にして、著者を思わせる主人公が、さまざまな肉体的欠陥を持ったひとびとの「欠損感覚」を探っていく物語。
視覚障害の夫婦、義足の女性、声帯を失った作家、嗅覚障害を患った寿司屋のおかみさん、盲学校の先生、聴覚障害者、そして記憶を失った板前の話……。

※本データはこの商品が発売された時点の情報です。

書籍一覧 > 光の闇

ブクレポ (レビュー)

ニックネーム: こたろう 投稿日:2013/07/05

何かが欠けていることで、備わるもの、授かるものもあるのかなと、かすかな光を感じました。

まーちさんに教えていただいた、佐伯さんの最新の短編集。
「欠損感覚」を通して身体感覚を探ってみる作品を書きたかったとあとがきで述べられています。
「欠損感覚」とは耳慣れない言葉です。常ならば備わっている五感などが先天的にあるいは後天的に失われた人の「そこに無い」と気づいてしまう感性よりももっと身近な感覚のことでしょうか?
作者はアスベスト過で苦しまれていて、そのことも作中に出てきますが、そのことで体の存在感というか常人ならば見落としていたような体が発するかすかなささやきに敏感になられたようです。
一日中病臥している人が窓から見える景色や風の音や、自分の中で起こっている気配に敏感になってしまうように、佐伯さんは欠けている感覚が気になるのでしょう。
そしてそれは、普段気づかなかった世界を読む人に見せてくれることでもありました。

決してドラマティックではないけれど、静かに染み入ってくるような空間がそれぞれにあります。
聞こえないご夫婦を訪ねるお話も、私自身の体験もあって身に沁みます。鏡が二人の心のつなぎようを表しているのも好感が持てます。

「水色の天井」という偶然喫茶店でであった義足の女性のお話を聞いていく、ただそれだけのストーリーなのですが、不思議に心に染みてきます。
事実とそれを聞きてきた人の何気ないため息のような心境を佐伯さんがとらえてそっと置くように、優しい言葉で書かれるからでしょうか?
嗅覚を失った寿司屋のおかみさんの話も、ちょっといいです。出前を頼んでいてすし飯の巣の具合に?マークをつけていた主人公の夫婦が話を聞いて納得するシーンも心が和む描写でした。

このような「欠損感覚」のついて学術的な、あるいは入門書的な書き方をされるよりもずっと心に染みる印象的な「物語」に仕上がっていると思いました。

繊細で弱さも感じさせて、それらを一切隠さずに描いていく「私小説家」佐伯一麦さんは、とても気になる作家です。

ニックネーム: まーち 投稿日:2013/06/21

『欠損感覚』とは?

この作品の主人公は、茂崎皓二という作家だが、作者自身といってもいいだろう。作者は、ずいぶん前から、欠損感覚を通して身体感覚を探ってみる小説を書いてみたいと思い続けていたそうだ。だから、この作品の登場人物は、何かを失った人たちばかりだ。そういうと、重い話とか、暗い話を想像するかもしれないが、全くそんな感じはなかった。登場人物たちは、みな、前向きでカラッとしていて、「潔い」という言葉すら浮かんできた。

この作品では、茂崎が、さまざまな人たちから話を聴くという形で展開していく(一部、例外あり)。聴覚を失ったご夫婦は、予想外に普通の生活をしていることに、茂崎は驚く。テレビドラマの影響で、さまざまな設備などがある家を想像していたのだが、ドラマの見すぎだと言われてしまう。しかし、東日本大震災で、奥様が津波で流されてしまってからのご主人の様子は、さすがに前向きというわけにはいかなかった。災害時、音が聞こえないというハンデは、かなり深刻だろう。

この作品の表紙の絵の作者である、松本竣介という画家は、旧制中学に入学した年に、脳脊髄膜炎のために聴覚を失ったそうだ。聴覚を失う前の音の記憶に、画家が耳を澄ましているけはいが画面から感じとれると作者は書いている。

視覚を失った人の話の中で、茂崎は、盲学校の文化祭に出かけている。そこで、アイマスクをしてお茶を入れるという体験をするのだが、目が見えないと、お茶一杯も入れることができないことに愕然とする。また、弱視の人のために、活字を巨大にした書物や、拡大読書器などがあるが、眺め渡さなければいけなくて、かえって疲れるらしい。目が見える人が、よかれと思ってしていることが、実は逆効果ということが、結構あるようだ。興味深かったのは、視覚を失った人は、寝ている時、どんな夢をみるのかという話だった。映像が浮かんでくるということはなく、実際に行動している心境にあるという感覚なのだそうだ。

嗅覚を失った人の話では、食べ物の味が、全くわからなくなってしまったそうだ。味というのは、味覚だけではないということがよくわかる。

そのほか、左足を事故で失った女性の話、下咽頭ガンで、声を失った作家の話、記憶を失った板前の話など、どれも興味深いものばかりだった。

この作品に登場した方たちは、失ったものをきちんと受け止め、自分らしい生き方をしていた。自分が同じ立場になったら、そんな風になれるかと考えたら、全く自信がない。あたりまえのように感じていることが、どれほどありがたいことなのか、あらためて考えさせられた。

作者はあとがきで、「視覚・聴覚・嗅覚・触覚・記憶・・・は響き合って連関していることに気付いた」と書いている。光が射さない『闇』という漢字が、門の中で音しか聞こえないという表意文字によって表されているというように。
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