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本 ストロベリーライフ

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本-ストロベリーライフ
著者: 荻原浩 (著)
定価 ¥1,728(税込)
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商品情報

出版社名
毎日新聞出版
発行年月
2016年 10月
ISBNコード
9784620108230
版型
--
ページ数
351P
平均評価
(4.5)
: 1件
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: 0件
ブクレポ
3件

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荻原浩 OFF

ブクレポ (レビュー)

ニックネーム: あきらパパ 投稿日:2017/10/15

農業するってのは、これなんだ!

福島県に赴任していた時、桃の美味しさに感激し、桃農家になろうと思っていた。
知り合った桃農家さんに話したところ「剪定やら、摘果やら、真夏に色付けのために敷いた反射シートの照り返しの中での収穫やら、とにかく大変な作業が続くけど、それでもやるの?」と言われ、「飯坂温泉で桃とかリンゴとかの「くだものの木オーナー制度」ってのやってっから、それにしたら」と勧められた。
まぁ、桃農家なんていきなりできるものではない、と暗に言われたのだろう。そりゃそうだ。都会生まれの都会育ちで農業に関わったことなど一切なく半世紀近く生きてきた人間なんだから。それでも、自分の桃を育ててみたいという思いはあり、そのオーナー制度とやらを調べてみた。
年間契約で木のオーナーになり、花見(人工授粉)、摘果、収穫などが体験できる制度(http://www.iizaka.com/join/fruits-owner/)とのこと。もちろん、自分の木になった果実は全て自分のものにできる。でもって、桃の場合はというと、1本あたり6万円の契約で収穫量は最低でも300玉ほど。通常予定収穫量は400玉ほどとのこと。1玉当たりに割り返してみると200~150円。桃の市販価格は1玉400円程度だから、元は取れる。(市販すればだが。) でも、桃の旬は、一つの品種で2週間程度。2週間の間に300~400玉の桃を、一日平均にすれば20玉超の桃を食べるなり何なりしなければならない。ちなみに、福島県が誇る品種「あかつき」の場合、大きい箱と言われる5kg箱に入る桃の数は15玉だ。
桃を育てる楽しみがあるとはいえ、一つの品種を毎日20玉超はなぁ… 約3か月の桃の時期をいろいろな品種を食べる方が楽しいし…
ということで、桃の木オーナーになることに踏ん切りがつかないでいる。




昔も今も、若い人のほとんどは、農業は嫌だ、と思っているのだろうか。
その理由は、肉体労働のハードワークだから、仕事も収穫も天候に左右されるから、都会のサラリーマンほうが安定しているから、などなど。そして、農業なんてかっこ悪い!から。
本書の主人公も、農業なんてかっこ悪い、との思いから、幼少の頃からの絵の才能を生かし、東京の美大に進学し、大手広告代理店のデザイナーとして就職した。大きな賞も受賞したこともあり、30代半ばを前に独立。だが、2年が経った今では、事務所の電話が鳴ることがほとんどない。4頁ほどのパンフレット作りの依頼があった後は、仕事の依頼がない。もう1か月近くも。
そんな矢先、静岡で苺農家を営む父親が脳梗塞で倒れたという知らせが入る。
父親は一命はとりとめたものの、リハビリして退院するまでには3か月は要するとの診断。しかも、障害が残るだろうから、今までのように農作業をするのは無理だろうと。

折しも2月も終わりに近い収穫期の真っただ中。年老いた母親一人に任せておくのもしのびなく、仕事のほうは開店休業状態でもあるということもあって、今のシーズンが終わるまでのつもりと、ずるずると収穫作業を手伝うことに。農業は嫌だと頑なに拒んできたにも拘らず。だが、次第に苺の魅力に憑りつかれ…


主人公がずるずると実家のイチゴ栽培を手伝うのは、父親が倒れ、実家の危機、を乗り越えるためが理由ではない。もっと本質的なことだ。農業を営もうとする者にとっての。
栽培している苺が、美味かったのだ!
「あ。ちょっと、待て。なんだ、これ。甘い。ほのかに酸っぱい。うまい。苺って、こんなにうまいものだっけ。(中略)けっして鋭い人ではないのに、子どもの頃から母親には、表情だけで心を見抜かれてしまう。「そりゃあ、採れたてだもんで。それに、ほら、出荷すんのは、熟れる前に詰めちゃうから」」(本書43頁) 「そうか、これが、苺の味なんだ。」(本書45頁)




福島に赴任していた時、毎週日曜日に福島駅東口で開かれている「GoodDay Market ふくしま」という近隣の農家さんが出店するマルシェに通って野菜とかお米とか買っていた。スーパーでも地物コーナーに並ぶトマトや菜っ葉や大根などの野菜を買っていた。
居る間は気づかなかったのだが、東京に戻ってから気づいた。東京のスーパーで売っている野菜とは、味が全然違う、と。福島で買って食べていた野菜や果物の方が、断然美味しかった、と。



福島県の平成29年度の新規就農者数は、28年度の238人を27人下回った211人であったが、3年連続で200人を超えた(http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/life/300625_723809_misc.pdf)。このうち、45歳未満の若い就農者は190人とのことだ。この数字が、今の農業界において多いのか少ないのか分からないが、少なくともこの190人は、農業なんてかっこ悪い、とは思っていないのだろう。
彼らの作る農産品を是非買って食べてみたい。熟す前に収穫して出荷されたものではなく、美味しさが熟したやつを。

ニックネーム: アーミー 投稿日:2017/08/08

未来へ続く明るい農業と家族の在り方

農業の後継とそれに関わる家族の葛藤を描いた物語で
すでにこたろうどんが素敵なレポを書かれています。
この作品、この夏の高校生の課題図書に選ばれているので
興味を持ち、読んでみました。

広告代理店を辞めて都内で
フリーのグラフィックデザイナーとして独立した恵介。
仕事が軌道にのらず焦っている所へ
静岡の実家で農業をしている父親が倒れたという知らせが入ります。
あわてて妻・美月と息子・銀河を伴って帰郷し、
父親が入院している病院へ行きました。
恵介の3人の姉たちはもう到着しており、
父親は脳梗塞で倒れたとのこと。
命をとりとめたけれど、3カ月の入院生活が必要とのことで
父親がやりかけている、苺栽培をどうしょうかと
長男である恵介は悩み出します。
末っ子だけれど長男であるがため、
幼いころから家を継ぐことを強いられ、
農業が面白くなくてデザインの勉強に走り、
家を飛び出た恵介だったのです。
けれど恵介は、高齢となった母が一人で黙々と
苺栽培の仕事をしているのを見るとほっておけず、
父が残した資料を見ながら恐る恐る苺の世話をはじめます。
それは父が良くなって退院しても続けられ、
妻と子供たちを東京に置いて
単身赴任のような形で実家で農業をしている形となりました。
苺栽培は順調に行き、
イチゴ狩り農園を始めるまでになりましたが・・・
離れ離れになっている妻と子供のことはどうするのか、
苺を育てながら恵介は思い悩んでいたのです・・。


なるほどね~。
日本の将来を担う高校生たちは
農業というものをどのように捉えるかなあ。
小農家の生産に捉われずに
イチゴ狩りというアイデアで大々的に打ち出す度胸の良さは
頭の柔らかい年代の者にしか出来ないことだろうと思いました。
農園のホームページには
情報を載せているブログがあり、そのタイトルは
「ストロベリーライフ」と名付けられています。
タイトルも明るい感じでいいですし、
家族や一族全員で苺栽培に取り組む様子は
明るい未来を想像させて、とても温かな気持ちになりました。
高校生がどんな感想を持ったのか、
課題図書の感想文も読んでみたいものだと思いました。

ニックネーム: こたろう 投稿日:2017/06/23

〈日本の家族〉の明るい未来図

タイトルは本の帯に使われている言葉です。
直木賞受賞第一作でもあります。
いかにも荻原さんらしい、ユーモアに苦みが少しまじってけれどけして暗くない、前向きな物語に仕上がっています。


物語は望月恵介三十六歳、グラフィック・デザイナーとして独立して二年。先細りで仕事が減り、危機感が募る毎日。そこへ飛び込んできたのは、静岡の実家の父が倒れたという知らせ。


恵介は美大を出てデザイナーの道へ進み、数々の賞も取った経歴を持ちますが、実家では長男として何かと後を継ぐことを期待される立場なのでした。
トマトの栽培に父が踏み切ったのも、息子が返ってくると期待してらしいのを恵介は知っていました。
そして危篤と聞いて帰った病室には三人の姉が並び、母親は家に帰ってひとり農作業をしています。
トマトだと思っていた温室はいつの間にかイチゴ栽培に変わっていました。
ちょうど収穫期、出荷時期にあたっていて腰痛を患う母一人に任せるわけにはいかず、本職のほうは依頼無しの状態でもあり、慣れないいちご収穫を手伝う恵介。
しかしそれは田舎暮らしを嫌う妻の美月を怒らせる原因にもなるのでした。


よくある展開なのですが、嫌々ながら手伝いだしたイチゴの栽培。
信じられないようなハードワーク、無理な姿勢、次々と襲ってくる害虫、病気、農薬の使用に台風、そして中学の同級生で今はいっぱしのイチゴ経営者の嫌味なガスという男性など、恵介を悩ませることばかりです。
そして一番の悩みが自身これからどうしたいのか、が決められない事。
デザイナーとしてやりたい一面、ほうっておけない実家の農作業、そして意外にやってみると面白い農作業。
と恵介の心は揺れます。
それは別居して幼い息子銀河と二人暮らしになった美月も同じなのでした。


一番感心するのは、イチゴ栽培についてよく調べられている事。
親株から別れて増やした株を植える作業。
それに適した土作りや株を植えるときに畝の外側にイチゴが垂れるように三十度傾けて植えるなど、知らない事ばかりです。
ちょっと嫌味な同級生ガスのイチゴ園はハイテク導入でパソコンでデータを管理して収穫率や甘みの多い果実の収穫に取り組んでいます。


そして恵介が見つけた生き残りの方策。
それは静岡の立地、目の前に大きくそびえる富士山も利用しての観光イチゴ園の経営でした。


父親も母親も恵介の本気の努力で元気をわけてもらい、最初は遺産相続問題でぎくしゃくしていた姉たちやその夫たちともうまくやりながら富士望月イチゴ園のオープンにこぎつけた恵介。さてお客たちはやってくるのか?


言葉遊びと軽い自虐に彩られたユーモラスな世界は荻原さん独特のもので、今回も健在です。安心して読める手堅さがあります。


恵介はデザイナーの仕事を辞めたわけではなく、静岡の地でも地道に仕事をつづける新しい「兼業農家」の道を開いたと言えます。
最後は別居していた妻と子も駆けつけて、感動の大団円となり、完熟の大玉のイチゴの旨さがジュジュッと伝わってきて、思わず食べたくなる一冊でした。


けれど実際の日本の農家の将来や再生は小説の仕事ではなくて行政や消費者である私たちもふくめて考え早急に手を打つ必要のある大問題だと思います。


我が家の近くのお茶畑もつぎつぎと耕作放棄地と化し、太陽光発電のパネルが立っている場所はまだましなほうです。


これから農業をはじめ第一次産業はどうなっていくのか、心配です。
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