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本 ラヴクラフト全集 1

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本-ラヴクラフト全集 1
著者: H.P.ラヴクラフト (著)
大西尹明 (訳)
定価 ¥756(税込)
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商品情報

出版社名
東京創元社
シリーズ名
創元推理文庫 523‐1
発行年月
1984年
ISBNコード
9784488523015
版型
--
ページ数
317P
平均評価
(4.5)
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ブクレポ
2件

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H.P.ラヴクラフト OFF
大西尹明 OFF

ブクレポ (レビュー)

ニックネーム: ランピアン 投稿日:2013/05/25

宇宙にいるのは、我々だけではない

洋泉社の刊行になる怪著『あなたの知らない怪獣マル秘大百科』に、主にホラーやSFの分野で脚本家、監督として活躍した故ダン・オバノンの成功物語が載っている。当時まだ無名であったオバノンは、一本の脚本を携え、これを映画化してくれる会社を探し回っていた。脚本の内容は、惑星間を航行中の宇宙船に侵入した恐るべき宇宙生物と、乗組員との死闘を描くSFである。だがオバノンの自信作は、一読した某プロデューサーからすげなく突き返されてしまった。そのプロデューサー曰く、「これをそのまま映画化してたら、『恐怖の火星探検』の単なるリメイクにしかならない」。『恐怖の火星探検(It!The Terror from Beyond Space)』。それは1958年に米国で公開された、いわゆるB級SF映画である。火星探検船に侵入した吸血生物によって、探検隊が全滅の危機に瀕するという筋立てのこの映画は、少年時代のオバノンに強い印象を与えていた。件のプロデューサーが看破したとおり、彼は問題の脚本のベースとしてこの映画のアイディアを拝借していたのだ。見事図星を指されたオバノンだが、これではめげなかった。幼少時からの怪奇・SFマニアだった彼には、まだ多くのアイディアの「抽斗」(むろん他人の作品のだが)があったからである。彼は「抽斗」から更に多様なネタを引き出し、例の脚本に付加してストーリーを大きく膨らませ、B級の筋立てを大作に仕立て上げた。この改作は見事採用されて銀幕を飾り、映画史に残る大ヒット作となって、監督と主演女優を一躍スターダムに押し上げるとともに、映画界にSFホラーという一大ジャンルを確立した。その作品こそ他でもない、『エイリアン』である。ところで、脚本を突き返されたオバノンが他作品から追加で拝借したネタが何だったかは、上掲書の執筆者の一人である評論家の町山智浩が詳細に分析、特定しているのだが、その一つとして挙げられているのが、怪奇小説の異才H・P・ラヴクラフトの一連の作品、そして彼の作品を後輩作家たちが体系化した「クトゥルー神話」である。ハワード・フィリップス・ラヴクラフト。米国はロードアイランド州の富裕な家庭に生まれた彼は、幼児期から優れた知的能力を発揮したが、精神と肉体を病んで実社会から脱落し、小説執筆と友人たちとの文通を除いては、ほぼ世捨て人に近い生涯を送った男である。彼が書き残した奇怪な小説群は、生前は低級なパルプ・フィクションとして一部の好事家に知られるのみであったが、ラヴクラフトの死後、徐々に作品の声価は高まり、その物語世界は彼を崇拝する後世の作家たちによって「クトゥルー神話」として書き継がれることになった。太古の昔、この地球は強大な力を持った人間ならざる異形の存在、邪神によって支配されていた。地球の主の座を人類に譲り、異次元や深海で長い眠りに就いている彼らだが、復活の機会を狙い、絶えず時空の裂け目から人間世界に侵入しようとしているのだ―。図らずも邪神と遭遇してしまった人間たちの恐怖を描く彼の作品は、時にコズミック(宇宙的)・ホラーとも呼ばれ、スティーヴン・キングら現役作家にも多くの信奉者を持つなど、今や怪奇小説の古典として不動の地位を築いている。上述の設定から、永井豪の名作『デビルマン』を連想する向きもあるだろう。『エイリアン』に話を戻すと、オバノンの手になる脚本の段階では、エイリアンは異星人に崇拝される邪神であり、主人公たちが謎の救難信号に導かれて降り立った場所もまた、実はエイリアンを祀った神殿だったという設定になっていた。エイリアンの姿形も、初期のスケッチではラヴクラフト作品からの影響が明らかだったという。ラヴクラフトという異端作家の、現代文化への多大な影響を物語るエピソードである。だが正直なところ、古典的なゴースト・ストーリーの愛好家を自任する私としては、ラヴクラフトの小説にだけはどうにも食指が動かず、英米の怪奇小説アンソロジーなどを読んでも、彼の作品だけは飛ばして読んでいた。邪神だの異次元だのという筋立てが、どうも幼稚に感じられてならなかったのである。しかし、遅まきながら本書を読んで、その評価を変えざるを得なくなった。例えば、文庫版全集の第一巻である本書の巻頭を飾る『インスマウスの影』である。アメリカの架空の町、インスマウスを訪れた主人公の奇怪な体験を描く本編を読むと、ラヴクラフトの描く恐怖が極めて今日的であり、ほとんど古びていないことに驚かされる。では、ラヴクラフト作品のどこが現代的なのか。それは彼の小説に登場する「邪悪なるもの」が、人間の理解を完全に絶した存在として描かれているという点にある。

「クトゥルー神話」の邪神たちは、人間とのコミュニケーションを拒む完全な「他者」であり、意識や知性を持っているとは推測されるものの、人類は邪神の意図や目的、いわんやその存在理由を知ることはできない。これは、かつて怪奇小説の主役であった幽霊やモンスターが、どこかしら人間臭い哀愁を漂わせていたのと対照的である。彼らはしょせん人間の分身であるために、我々にも理解可能な物語的背景や人間的感情、即ち「意味」を持っていた。

つまり、双方の間には意思疎通の可能性が残されていたわけだが、それは今日では怪物の与える恐怖を弱める方向に働いてしまうのである。理解可能なものは怖くない、それが当世の「怪奇小説作法」なのだ。だから、現代のホラー作家たちは、自らが創造するモンスターから「意味」を極力除去しようとしている。理性や感情を失い、食欲だけの存在となり下がったゾンビなどはその好例だろう。

オバノンが生んだエイリアンもまた、機械なのか生物なのか判然としない姿形を持ち、ただ殺戮のみを事とする、人間の理解を越えた怪物として描かれていた。人間的要素を持たないラヴクラフトの邪神たちは、当世流行の「意味を拒絶する怪物」の先蹤なのである。私はまたラヴクラフトの邪神たちから、『新世紀エヴァンゲリオン』において地球を襲撃する謎の生命体「使徒」を連想する。「使徒」もまた、人類とのコミュニケーションの可能性を持たない、人間にとってどこまでも不可解な「他者」として描かれていた。庵野秀明がラヴクラフトを読んでいたかどうかは知らないが。

かつて一世を風靡したスピルバーグのSF大作『未知との遭遇』のキャッチコピーは、「宇宙にいるのは、われわれだけではない(We are not Alone)」であった。ラヴクラフトが『クトゥルー神話』で描いたのもまた、同様の主題である。
だが、人類と宇宙人の相互理解の希望を描いたスピルバーグ作品とは対照的に、彼が描いたのは恐怖と絶望に満ちた物語、人類の背後には、我々との意思疎通を拒む強大な存在が潜んでいるという、無気味な世界観だった。ラヴクラフト作品の今日性は、まさにこの点にこそあるのである。

ニックネーム: ayah 投稿日:2011/12/08

不気味~~~な世界観

古い作品ですが、おどろおどろしい雰囲気が気に入りました。
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