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本 昭和史の決定的瞬間

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本-昭和史の決定的瞬間
著者: 坂野潤治 (著)
定価 ¥820(税込)
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商品情報

出版社名
筑摩書房
シリーズ名
ちくま新書 457
発行年月
2004年 02月
ISBNコード
9784480061577
版型
--
ページ数
221P
平均評価
(4)
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ブクレポ
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坂野潤治 OFF

内容紹介

民政党議員だった斎藤隆夫の「粛軍演説」は、軍部批判・戦争批判の演説として有名である。
つまり、輸出依存の資本家を支持層に持つ民政党は、一貫して平和を重視していたが、本来は平和勢力であるべき労働者の社会改良の要求には冷淡だった。
その結果、「戦争か平和か」という争点は「市場原理派か福祉重視か」という対立と交錯しながら、昭和11・12年の分岐点になだれ込んでいく。
従来の通説である「一五年戦争史観」を越えて、「戦前」を新たな視点から見直す。

※本データはこの商品が発売された時点の情報です。

目次

プロローグ―「昭和」の二つの危機/第1章 反乱は総選挙の直後に起こった(前史としてのエリートの二極分裂/総選挙と二・二六事件)/第2章 陸軍も大きな抵抗にあっていた(特別議会での攻防/「保守党」と「急進党」の「人民戦線」)/第3章 平和重視の内閣は「流産」した(広田弘毅内閣の退陣(昭和一二年一月)/宇垣一成の組閣失敗 ほか)/第4章 対立を深める軍拡と生活改善(「狭義国防論」の登場/「広義国防論」の反撃)/第5章 戦争は民主勢力の躍進の中で起こった(「民主主義」と「戦争」/「戦争」と「民主主義」 ほか)/エピローグ―後世の常識と歴史の真実

著者情報

坂野 潤治
1937年生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。文学修士。東京大学教授、千葉大学教授を経て、現在は東京大学名誉教授。日本近代政治史を専攻し、1868年の王政復古から1937年の日中戦争の勃発までを研究する

ブクレポ (レビュー)

ニックネーム: ランピアン 投稿日:2013/05/11

平和と民主主義との相克

先日の朝、久しぶりに朝日新聞の「声」欄を眺めていると、『96条の先、元首天皇制では』と題した投稿が目に入ったので、暇潰しに読んでみたのだが、その頓狂な内容に思わず笑ってしまった。当年とって75歳という投稿者はいう。高い支持率を誇る宰相安倍晋三の、次の目標は改憲だろう。安倍は九条のみならず第一条をも改正し、象徴天皇制から元首天皇制へと進むのではないか。そしてその後に訪れるのは天皇の政治的利用と、統帥権の名の下に軍部の独走を許した戦前への先祖返りだ、と。要するにこの老人、保守主義と復古主義の区別もついていないのである。安倍晋三は保守主義者に違いないが、断じて復古主義者ではない。仮にそうであるなら、現内閣の経済政策の本丸というべき産業競争力会議の委員名簿に、竹中平蔵や三木谷浩史などという人物の名が入っている筈がないからだ。大革命以来、急進的改革に反対する勢力を「右」と呼ぶ習いだが、現代世界における「右」とは、右翼民族主義者から伝統的保守主義者、果てはハイエキアンやリバタリアンまで、恐ろしく幅広い思想を内に含んだ概念である。「右」が一様に戦前的価値観への回帰を志向すると思ったら大間違いで、ハイエキアンのように日本の伝統に批判的な「右」も存在するのだ。そもそも、元首天皇制への移行が安倍にいかなるメリットをもたらすというのだろう。彼が日本を意のままに牛耳りたいと考えるなら、自身に権力を集中させる方策、例えば首相公選制の実現の方が余程有効な筈であって、今更権力機構に天皇という中間項を挟むことに、一体何の意味があるだろうか。近年の昭和史研究は、開明的な昭和天皇が戦前の「ファッショ勢力」にとって邪魔者でしかなかったことを教えているし、国民が天皇制を支持しているのは、あくまで天皇が統治行為に関与しないという前提あってのことである。この前提を変更することなど、自民党の党略上百害あって一利なしであろう。大体、「戦争か平和か」という問題を、統治形態の如何と直結させる発想が安易なのである。政体が民主的であればあるほど平和的だというなら、平素日本より民主的と評されるアメリカが、第二次大戦後幾度となく戦争当事国となっているのはなぜなのだろうか。民主主義の母国を自任するイギリスやフランスが核武装国なのは、いったいなぜなのだろうか。言うも愚かなことだが、統治形態が民主的でも戦争は起こるのである。平和憲法があろうがあるまいが、「軍隊」を持っている以上戦争は起こり得る。戦雲が垂れ込めるのを防ぎたければ、天皇制云々という近視眼的な視点から離れ、わが国の政治経済情勢をトータルに把握、診断する努力を続けるしかないのだし、安倍政権を批判したいなら材料は他にいくらでも転がっているだろうに。ご苦労なことである。素人の愚論に絡んだのは他でもない、本書を評するに当たっての枕に好適だからである。本書の題にいう「決定的瞬間」とは、昭和11年4月から12年7月にかけての「危機」の局面、即ち二・二六事件を経て日中戦争が勃発し、国情が太平洋戦争へと傾斜していった時局の転換点のことである。だが、この約1年半は無論多くの史家の関心の的であって、研究書も汗牛充棟である。果たして坂野が切り込むべき間隙があるだろうか。ある。その間隙とは、この「危機」の一年半が、我々の常識とは逆に、民主主義的思潮が従来になく高まった時期だったという事実である。多くの日本人は、二・二六事件の発生によりテロへの恐怖から既成政党やマスコミは沈黙し、言論が圧殺され、民主主義は機能不全のまま日中戦争に突入していったのだと教えられてきた。だが著者は、それが真っ赤な嘘だと断ずるのだ。坂野は、この危機の二年間における政治的アクターの動向を丹念に分析することで、日中戦争を目前に控えた当時の日本政治が、いかに「民主的」であったかを立証してみせる。民主主義が後退したから、或いは敗北したから戦争が起こったのではない。民主勢力が躍進し、民主主義が確実に機能していたにも関わらず、戦争は起こったのである。まず、日本政治の最大のアクターたる国民の民意である。昭和11年2月に行われた総選挙では、陸軍皇道派と結んだ政友会が惨敗、「反ファシズム」を掲げる民政党、社会大衆党など左派が大勝した。この時点では、民意は軍部の台頭にはっきり「否」を突き付けていたのである。次に天皇である。二・二六事件によって内大臣と侍従長を殺され、孤立した昭和天皇は、しかし周知のとおり立憲主義の原則を破ってまで、叛乱軍討伐の命令を出した。天皇は親政を求める青年将校らの切願には一顧だに与えず、民主主義の原則を墨守したのである。既成政党もまた、軍部への反撃を開始した。帝国議会では、斎藤隆夫が有名な「粛軍演説」で、浜田国松が「割腹問答」で軍部を真っ向から批判していた。また坂野は、有名な宇垣流産内閣について、軍部を抑え戦争を回避するために、宇垣が政友会及び民政党の一部と連携して仕掛けた、いわば日本版「人民戦線」であったと評価している。マスコミも然りである。言論は圧殺されていたどころではない。『改造』や『中央公論』といった総合誌では、斎藤隆夫や河合栄治郎が軍部を批判し、マルキスト大森義太郎が堂々と人民戦線を論じていたのである。それもほとんど伏字なしで。中でも特筆すべきは、軍事評論家にして朝日新聞論説委員であった武藤貞一である。武藤は、盧溝橋事件が中国との全面戦争となり、最終的には世界大戦にまで発展すること、そして東京が焼け野原になるであろうことまで予言していた。日本人は、自国の置かれた状況を把握するに十分な情報を入手できる環境にあったのである。では、なぜ戦争は起こったのか。民主主義が後退するどころか、むしろ活性化していたにも関わらず、戦争を止めることができなかったのはなぜか。それは、平和勢力が必ずしも民主勢力ではないという、悲劇的なすれ違いのためだった。すなわち、当時最大の平和勢力だった立憲民政党は、その本質において資本家を支持基盤とするブルジョア政党であり、果敢に軍部に抗する一方で、昭和恐慌以来生活苦に喘ぐ中・下層民による民主化への要求には、恐ろしく冷淡だった。議会に提出された労働組合法案や下層労働者のための退職金積立法案は、いずれも資本家の意を受けた民政党によって潰されているのである。これとは対照的に民主的改革に熱心だったのが、後にファッショ勢力と指弾されることになる軍部と官僚である。これは悪い冗談ではない。軍部は資本主義の改革による国民の生活基盤の強化を訴えていたし、先に挙げた労働改革諸法案を議会に提出したのは、俗に「新官僚」と呼ばれる改革派の官僚たちだった。現に当時の社会民主政党だった社会大衆党は、「広義国防」のスローガンの下、軍部支持を表明し続けたのである。平等を求める民意が徐々に軍部に接近していったとしても、不思議はあるまい。民主主義が平和主義から離反し、軍国主義と結びつくという逆理。それは、民主主義という政治思想の中に、自由と平等という背反する契機が含まれているからだ。民主的であれば平和が維持できるという無知がどれほど危険か、歴史上のアクターを善玉と悪玉に分かつホイッグ史観がどれほど愚かしいか、“昭和の悲劇”は、我々に教えているのである。
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