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本 蜜蜂と遠雷

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本-蜜蜂と遠雷
著者: 恩田陸 (著)
定価 ¥1,944(税込)
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商品情報

出版社名
幻冬舎
発行年月
2016年 09月
ISBNコード
9784344030039
版型
--
ページ数
507P
平均評価
(5)
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ブクレポ
3件

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恩田陸 OFF

内容紹介

私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!

※本データはこの商品が発売された時点の情報です。

ブクレポ  ( ブクレポについて

ニックネーム: p-mama 投稿日:2017/01/12

文章で音楽を聴く

世界的ピアノコンクールとなりつつある芳ヶ江国際ピアノコンクールにエントリーした4人を軸に物語は進んでいく。

風間塵は天才ピアニスト。
世界的なピアニストである、ユウジ・フォン・ホフマンに彼のたたぐいまれなる才能を見出され、彼の推薦状と共に世にエントリーする。ホフマンに「狭いところに閉じこめられている音楽を広いところへ連れ出してくれ。」と頼まれるが、果たして解放できるのか?
ホフマンの推薦状にあった「彼はギフト」の言葉。
彼はすべての音楽家のギフトになるのか?

栄伝亜夜は天才ピアノ少女として華々しいコンサート歴を持っているが、あるきっかけでピアノから遠ざかってしまう。音大進学を強く勧められ、その便宜を図ってくれた浜崎学長に義理立てしコンクールにエントリーしたのだが、彼女は復活できるのか?

マサル・カルロス・レヴィ・アナトールは日系三世の母を持つ。彼は数ヶ月日本で暮らしたことがあり、実はその間に亜夜と運命的な出会いを果たしていた。
その後フランス・アメリカでピアノを学んだが、自分と亜夜、幼い二人を音楽の世界に導いてくれた綿貫先生と亜夜と再び邂逅することを夢見ている。このコンクールの審査員でもあるナサニエル・シルヴァーバーグに師事していて、彼の秘蔵っ子としてコンクールにエントリーしたマサルは、優勝できるのか?

そして、高島明石は年齢制限ギリギリの28歳でエントリーしたサラリーマン。
所帯を持って「生活者の音楽」を目指しコンクールに出ることを決意した。
音大まで進んだが音楽業界とその周辺の一部の人が持つ歪んだ選民思想に違和感を覚え、普通のところにいる演奏者でありたいと思っている。が、”本当は退路を絶って音楽に向き合うことが怖くて、ただ脱落したに過ぎないのでは”という気持ちと葛藤している。
果たして彼は「生活者の音楽」を奏でることができるのか?

遠雷は自然界にあるすべての音が驟雨のように降り注ぐ様であり、明るい野山を群れ飛ぶ蜜蜂は、世界を祝福する音符だそうだ。音楽は自然の中にある、ということか。

物語の中でマサルがいうように「普通の人が好む音楽と演奏家が表現したい音楽」はきっと違うだろう。私もこの中で知っている曲はメロディアスで有名なものだけ。
子供が音楽をしていたことで、演奏家として生きていくことの大変さも少しだけ知っている。コンクールの事情や人間関係も複雑な思いで読んだ。

それでも読んでいる間中ピアノの音が鳴り響くような感じがし、文章を読んでいるだけなのにメロディが聞こえてくるような幸せな気持ちになった。
決して扇情的に描かれた物語ではないのに、淡々と進んでいくコンクールの様子が本当のドラマチックを表していているように思えた。

ニックネーム: こたろう 投稿日:2016/11/08

題名がいまいち、伝わってこないけれど……

まーちさんも絶賛されていた、国際ピアノコンクールを描いた作品です。
作者の筆はあくまでストレートに音楽に挑む若者とそれを評価するという、困難な仕事を引き受けた審査員を描いています。


異形のとんでもない才能をもった登場人物が、いきなり登場して思いもかけない方向へ物語を引っ張っていく。見たこともない、聞いたこともないやり方なのだけれど、とても魅力的な存在。
そんな物語は、とても素敵な傑作になる要素がたっぷりと詰まっていると言えるでしょう。
人並ではない、才能のきらめきと、その大きさを持て余しながらも運命的に道を歩み始め、気が付いたらその足取りは早く、早くなり、疾走しているのにちっとも苦しくない。
読者はそのような自分とは異なる才能を、きらめきを見せてくれる登場人物が読みたいのだと思います。
ヒーロー然としたスカーフを首に巻いていなくても、恩田陸の描く物語のヒーローたちは颯爽としています。
この前に読んだ「チョコレートコスモス」は演劇のミューズに好かれた女性たちの物語でしたが、今回は国際ピアノコンクールという最高に高度で難易度の高い壁に挑む若者たちの姿を描いています。
くわしくはまーちさんのレポを参照していただきたいです。とても私にはあのように簡潔にわかりやすく、けれど作品の雰囲気や香りをそのまま切り取ってきたようなレポは書けませんので。
私にできることは、個人的な感想、印象をブツブツとつぶやくことぐらいです。


四人の主な登場人物を作者は設定し、その心の動きや動揺、悩み、そして成長していく過程を描いています。同時にピアノコンクールというお祭りの仕組みや過程をわかりやすく解説もしてくれているようです。
そして特徴的なのは、音楽という特殊な世界を言葉に置き換えるときに、恩田陸はけして大げさにならず、控えめに均質な表現で音を言葉に置き換えようとしてることだと思います。
例えに出すと貶すようで、気が咎めるのですが、例えば中山七里さんの作品で音についての表現はやはり大げさで、どうしてもだんだん強度を高める表現になっています。つまり強弱で、その大きさ、固まりをしめすというやり方だと思います。
それに対して恩田さんは、聞こえてくる音をそのままに等質な言葉に置きかえていこうと決意しているかのようです。だから物語が進んでいっても、その表現は嫌味に感じられないのだと思いました。


そして主な四人がそれぞれに抱えている過去や今現在の不安や問題もふくめ、とても身近な等身大の人間に思えること。
無邪気で天才的な、独創的な演奏をみせる風間塵。ラテン系でありながら素直な感性を交換度高い演奏で表せるマサル。一度天才少女としてデヴューしながら頼っていた母の死で、演奏という世界から逃げ出した過去をもつ栄伝亜夜。二十八歳と遅咲きの挑戦ながらその人柄が伝わってくるような温かい演奏を見せる明石。


目立っているのはトリックスター的な役割を与えられた少年(まさにあどけない少年という容姿も行動もその役柄を演じきっている印象がある)風間塵。かれはそれまで正規の音楽教育を受けたこともなく、自分のピアノももたず、最初の予選会には養蜂家である父の手伝いをした後に泥だらけの手で会場にやってくる。入賞したら買ってもらえるピアノを目当てに。
しかし彼はその少し前に亡くなっていたホフマンという偉大な音楽家の推薦状を携えていた。どころか信じられないことにホフマンの弟子だったという。
彼の演奏をどう聞き評価するか、が審査員たちのいわば与えられた課題となる。


そして一次、二次と審査は行われ、当然のごとく完成度は高い物のその内面に、芸術性、訴えに値する中身を持っていない演奏者ははじかれていきます。


上記四人のうち三人が本選、つまり最終審査に勝ち残りそれぞれに個性的な演奏を披露し、順位が決まるところで本作は終わるのだが、読み手もその過酷な審査につき合わされて必死に考え聞こうとする気分を味わうことができる。
音楽とは何か、という命題までひょっこりと姿を現しそうな気配があるのです。
最後のページにコンクールの最終評価、順位が載っていますが、やや意義ありというか私にはうなずけない物でした。本当にこの人が一位なの、と。


個人的には演劇という会話、言葉をやり取りする世界のほうが理解しやすかったために、チョコレートコスモスにくらべてその高揚感、雷に打たれたような(遠雷だと思っていたらいきなり目の前に落ちたような気分)にさせてくれる度合いはやや低かった。すべて私の素養、教養不足だと感じる。

ニックネーム: まーち 投稿日:2016/10/19

ブラボー!!!

この作品は、ひと言で言えば、国際ピアノコンクールの世界を描いた作品なのだが、コンクールの最中に、事件が起きるわけでもないし、コンクールの裏側のドロドロを描いた話でもない。

この作品の主な登場人物は、4人のコンクール参加者である。
高島明石(あかし)は28歳。応募規定ギリギリの年齢である。彼は音楽に対する気持ちをふっきるために、記念受験のような気持ちで、コンクールに応募した。
栄伝亜夜(えいでん あや)は20歳。彼女はかつて、「天才少女」と呼ばれ、コンサート活動をしていたのだが、13歳の時に、ピアノの指導者でもあり、彼女の身の回りのことを全てやってくれていた母親が急死し、突然襲われた喪失感から、コンサート会場から逃げ出し、そのまま、表舞台から姿を消してしまったのである。そんな彼女は、音大の学長・浜崎と出会い、今回のコンクールに出場することになったのだ。
マサル・カルロス・レヴィ・アナトールは19歳。母親は、日系三世のペルー人である。彼は、5歳から7歳までの3年間、日本に住んでいて、その時に、亜夜と出会っていた。彼に、ピアノの世界を教えてくれたのも亜夜なのだ。そんな二人が、コンクールの会場で、10年ぶり以上の再会を果たしたのである。
そして、風間塵(じん)は16歳。彼の父親は養蜂家で、世界中を移動しながらの生活らしい。彼は、偉大な音楽家・ホフマンの弟子で、彼の推薦状まで貰っているのだ。しかしそれは、審査員たちにとっては、信じがたいことだったのである。弟子をとらないはずのホフマンが、わざわざ出向いていって指導したなどということがあり得るのだろうか。そして、彼の演奏に関しても、評価が真っ二つに分かれたのである。しかし、そんなことまで、亡くなったホフマンは、彼の推薦状の中で、予測していたのだ。
そして、風間塵は、『ギフト』だというのだが・・・


この作品の素晴らしさは、私の筆力では、とても伝えられそうもない。
コンクールの参加者たちが奏でる音楽の向こう側に見えてくる、物語や風景。そして、参加者たちの、コンクールの期間中の、心と演奏の変化が、約500ページ、二段組みのボリュームで描かれていく。
参加者たちは、お互いの演奏を聴くことによって、一次予選・二次予選・三次予選・本選と進んでいくにしたがって、驚きの進化をとげていく。
特に、影響を及ぼしたのは、風間塵の存在である。ピアノを持っていないという彼の、型破りの演奏は、他の参加者のみならず、観客も、さらには、否定的だった審査員たちまでも魅了していく。


「天才少女の復活劇」という、好奇の目にさらされ、恐怖心に襲われていた亜夜の気持ちも、風間塵と出会い、彼の奏でる音楽を聴くことによって、どんどん変化していく。


音楽との区切りをつけようと思っていた明石も、音楽に焦がれ、切望する、自分の気持ちに気付いたようである。


マサルも、亜夜との再会、そして、風間塵という少年との出会いによって、ますます、天才性に磨きがかかったようだ。


そんな彼らの演奏や内面が、本人だけでなく、周りの人たちの目や耳を通して描かれていくのだ。そして、ホフマンが、風間塵のことを『ギフト』だと言った意味もわかってくる。


風間塵という少年は、まさに、「神様に愛された子ども」なのだろう。彼は、師匠であるホフマンと約束していた。「音楽を、広いところに連れ出してみせる」と。


コンクールというと、結果ばかりに注目していたが、そこに至るまでに、こんなに厳しい過程があるということを、初めて知った。


音楽の素晴らしさが、ものすごい迫力で伝わってくる、読めば読むほど惹き込まれていく作品だった。


読み終わって、スタンディングオベーションという感じである。
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