ニックネーム:
まーち
投稿日:2017/04/02
ミステリにしなくても・・・
このタイトルでこの表紙、「これ、ほんとに中山さんの作品?」と思ったのは、私だけではないだろう。読んでみても、途中までは、どう見ても家族小説である。
ところが、著者の他の作品でも登場している宮藤刑事が出てきたあたりから、雰囲気が変わってくるのだ。
秋山景子と息子の雅彦(14歳)・太一(10歳)親子は、火事で、主の史親と自宅を失った。
彼女たちは、史親の実家である、秋山善吉工務店に身を寄せることになる。
しかしながら、生前の史親と善吉の関係は険悪で、ほとんど交流がなかったのである。
さらに、景子も雅彦も、善吉のことが苦手だった。
そんな事情で、ぎこちない同居生活が始まったのだが、3人とも、善吉のおかげで、それぞれが巻き込まれたトラブルから解放されることになり、善吉に対する気持ちが、大きく変わっていくのだった。
ここまでの話をさらにふくらませていけば、昭和の香り漂う家族小説が出来上がるだろう。
しかし、そこはやはり中山さんの作品なので、家族小説で終わらせるわけにはいかなかったらしい。
刑事の宮藤は、秋山家の火事は、単なる失火ではないと感じていた。
独自に調査を進めた彼は、景子を疑い始める。
事情聴取をしても、彼女の態度は、落ち着きがない。
しかし、決め手となる証拠が、何一つないのだ。
その後宮藤は、善吉にも疑いの目を向け始める。
宮藤に対し、挑発的な態度をとる善吉。
宮藤は、なんとかして、証拠を見つけ出そうとするのだが・・・
この作品、個人的な印象としては、ミステリにする必要があったのかなと思った。
強面で、態度は無愛想、べらんめえ口調で古色蒼然とした考えの、いかにも、昭和の頑固親父という感じの善吉と、嫁と孫たちを描いた家族小説でよかった気がしてしまうのだ。
宮藤刑事が登場する前とあとで、話の雰囲気があまりにも違い、ちょっと違和感をおぼえた。
どんでん返しがお得意の中山さんなので、この展開そのものがどんでん返しということになるのだろうか。