ニックネーム:
sasha
投稿日:2013/12/23
良き数学者にして熱烈な共和主義者
アパレルの倉庫に勤めていた頃、繁忙期になると当然のように
残業だった。商品の出荷に追われてヘロヘロになって集計表
を書き込む夜8時過ぎ。8+8の暗算が出来なかった。
隣で出荷指示書を整理している相棒に「ねぇ、8+8っていくつ?」
と聞いて呆れられたっけ。
現在は派遣先で電話オペレーターをしている。就業時間、1日の
受電件数の合計を出す。やべぇ、二ケタの足し算が暗算で出来
ない。電卓があってよかったよ。
ことほどさように数字が苦手である。中学・高校時代はなんで
この世に数学なんてものがあるのか恨んだものだ。
以前ポアンカレ予想を解き明かしたロシア人数学者の話を
読んだ。数式はチンプンカンプン。でも、数学者という人々の
評伝には興味を持った。
そこで本書である。ガロア理論は聴いたことがあるだけ。その
理論を展開した19世紀の天才数学者の評伝である。
もう生まれた時代が悪かったとしか言えない。19世紀のフランス。
王党派と共和派が鎬を削る時代に生まれたガロアの人生には、
政治の影が色濃くつきまとう。
彼に理解を示す教師に出会え、せっかくその才能を開花させた
のに数学よりも政治運動にのめり込んでしまうのだものな。
時代がもう少し安定していたのならば、ガロアは20歳で世を
去ることもなかったのかもしれないし、その後も数学の世界
で研究を続けられたのかもしれない。
数学がお手上げでも興味深く読めたのは、著者のガロアへ
対する愛情の深さが感じられたからか。
ニックネーム:
tenkiya
投稿日:2010/12/31
2011年はフランスの数学者エ…
2011年はフランスの数学者エヴァリスト・ガロア生誕200年ですが、それを前に2010年に出版されたガロアの評伝です。
著者は京都大学の准教授をしており、日頃若者である学生に向けている同じ視線を20歳でこの世を去った天才数学者ガロアに注いでいます。その意味では、等身大のガロア像を描いた初めての作品と言えるかもしれません。
しかし、それにも増してこの本の優れている点は、ガロアがサン・ペラジー監獄で著した『純粋解析学についての二論文』の序文が全文掲載されているところです。これまでに出版された多くの書物では、この序文は不完全な形でしか紹介されておらず、例えばインフェルトの『ガロアの生涯 神々の愛でし人』では肝心な部分が省略されてしまっています。
この省略された部分に書かれていたことは、数学の将来像あるいはガロアがこれから進もうとしていた道の展望でした。「解析学の解析学を構築する」と述べたガロアの夢はまさにそれ以降の19世紀,20世紀の数学が歩んだ道であり、現在もなお研究が進められている内容であると言えます。
このように代数方程式を研究するために自ら編み出した「群論」という武器が、数学を研究する将来に大きく役立つことを予見していたというのもガロアの天才ぶりを裏付けるものと言えるでしょう。
最新のガロア研究の成果を知る上で格好の本であり、ガロアを初めて知る人にもぜひオススメです。