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本 全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路

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本-全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路
著者: 松本修 (著)
定価 ¥853(税込)
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商品情報

出版社名
新潮社
シリーズ名
新潮文庫
発行年月
1996年 12月
ISBNコード
9784101441214
版型
--
ページ数
582P
平均評価
(5)
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ブクレポ
2件

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松本修 OFF

ブクレポ  ( ブクレポについて

ニックネーム: ムーミン2号 投稿日:2014/06/08

言葉が旅をする

成毛眞・編の岩波新書『面白い本』についてはまーちさんが最近レポされているが、その中の第1章にあたる「ピンポイント歴史学」の第2項にあたる「現在日本民俗学」で紹介されていたのが本書。既にTuckerさんの素晴らしいレポがあるので、そちらも参照していただきたい。


柳田國男の『蝸牛考』により「方言周圏論」が提唱されていることはわりとよく知られているだろう。もちろん、この本の中でも触れられている。柳田國男はこの周圏論のことを「あれはどうも成り立つかどうかわかりません」と晩年には言っていたことが紹介されていて、何かにけつまずいたような感覚を覚える。また、柳田國男が東京朝日新聞社を冠して郵送によるアンケート調査を実施し、その成果で『蝸牛考』が書かれたことに触れられているが、その時のアンケート調査項目は32項目もあった。ただ、「方言周圏論」に有効なサンプルがカタツムリしかなかったようだと分析している。


しかし、この「アホ・バカ」分布を詳細に調査していくと、方言周圏論を裏付けるような、京都を中心とした見事な同心円が描かれることが分かってきた。
この成果は協力を惜しまなかった大阪大学の徳川教授の手引きにより学会でも発表することとなるのだが、そういう学術的な部分も十分に含みながら、一方、もともとこれは朝日放送の深夜番組「探偵!ナイトスクープ」に寄せられた「アホ」と「バカ」の境界線を探ってほしいという一通の投書から始まったテレビ番組から発した著作であって、テレビ制作部に所属する著者の、その調査の様子やTV番組作りなども含んだ、硬軟とりまぜた内容となっている。
ちょっと難しいところは「ここから○ページ、頑張って」とか「ここからが肝心だからしっかり読んで」みたいな励ましもあって、構えて読むと案外そうでもなかったりしていつの間にか内容に引き込まれている。


放送そのものは平成3年頃の話だけど、今もってこの調査結果は色褪せていない。
調査結果、の中身には2つあって、もちろん一つはその分布を日本地図に落とし込み、同心円を見事に描いた放送内容そのもの。そしてもう一つは、「アホ」「バカ」という言葉および各地方のその意を表す方言が「痴」「愚」「無知」などをストレートに表現したものではないという、日本人の奥ゆかしい特徴を示しているということ。
前者で特にスリリングなのは、沖縄方面で「アホ・バカ」を「フリムン」と言うらしいのだが、その語源を琉球方言の「ハ行」の特徴を巡って解明する部分である。語源は「惚れ者」と仮定できたのだが、それがなぜ「フリムン」となっているのか? 単に訛っているのではない。琉球方言では「ハ行」は「フ」以外は「パ行」となって発音され、しかも琉球には母音は3つしかないので「え」は「い」に「お」は「う」に変わるのだ。したがって「ほれもの」は「プリヌム」となりそちらが訛って「フリムン」となったと結論づける。
最後の方は「アホ」と「バカ」の語源を探る内容なのだが、放送内容とは直接関係していないので、この部分は学術的な面の方が勝っている。


読みながら途中で「あっ」と声を上げてしまったのだが、それは岡山で「バカ」のことを「あんごう」というとのアンケート結果があった時だ。
ワタシは小学校3年生になる時に、広島県の福山市中央部から東の端、岡山県境に引っ越し転校したのだが、言葉が随分と違っていてビックリした。「あんごう」もこの地方では使われていたことを急に思い出したのだ。「あんごう」は「鮟鱇(アンコウ)」に由来するのだが、「鮟鱇」は深海魚ではなく山椒魚のことを指す言葉なのである。福山市を北に上っていくと、当時(40年以上前)は確かに山椒魚が生息する川があったことも思い出した。
今暮らしている高知では「アホ」が使われるが、ちょっと抜けたような状態は「トロイ」とか「トロコイ」と言う。それも分布図には落とし込まれていて、なぜか納得してしまった。ちなみに使い方は「あいつ、トロコイにゃー」(あいつアホだなぁ~)。


直近の京都のはやり言葉は「アホ」である。そのいくつか前が「バカ」。だから関西地方では「アホ」が使われているのだが、ずっと遠く、東北地方と九州の端っこの方は「ホンジナシ」が使われている。この「ホンジナシ」は相当昔の京の言葉なのであるという。更に古い、日本語の原初的な言葉が残っているのは沖縄なのである。
京言葉が西に東に伝播する速度は1年に約1キロ。旅する言葉はカメの歩みだ。


中国の文化的影響を受け日本語が発展してきた中世を揺籃期とすれば、日本独自の文化が花開く江戸時代に爛熟期を迎える。ところが、明治維新によって近代化が図られた日本では標準語が定められ、全国に広めようとされる。そして関東ではいわゆる下町言葉が関東大震災で壊滅してしまった。下町が震災により焼けてしまい、新しい市街化がなされたためだ。
さらに現在は情報化の時代。テレビやネットの影響は測り知れない。例えば100年後、200年度に「アホ・バカ」がどのような分布になっているかに想いを馳せてもその時代には生きてはいないのだが、同心円がゆがんでいるか、なくなっているか・・・???
現在は47都道府県となっているが、これも明治維新以降に定められた県境。江戸の藩政を基にしているとはいっても、方言を県単位でまとめるのは無理があるだろう。福山市はかつては備後藩だった。岡山の東から備前・備中・備後と並んでいることを考えると、そっちに近いのか、とも思う。広島県は備後と安芸の両藩が一緒になった県だが、安芸地方の言葉と備後地方のそれとは随分違う。今放送されている「極悪がんぼ」の「がんぼ」なんて、聞いたこともなかったし。広島弁だなんて知らなかった。


今でも関西では「バカモン」は使われる。というか、これも関西発の言葉だ。だから、サザエさんの父上・波平さんが「ばっかも~ん!!」と落とす雷も関西発の言葉。
なお、この番組の構成作家は百田尚樹さんだった。この著書の中で、何度も登場する。
最後の方では、「疲れた」「みにくい」「かわいそう」の分布図が載せられている。「アホ・バカ」に続く調査の結果だ。これも同心円になっていて興味深い。

ニックネーム: Tucker 投稿日:2012/09/29

庶民の言葉

テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」に寄せられた一通の投書。
”大阪の人は「アホ」と言い、東京の人は「バカ」と言う。ならば、その境界は?”

バカバカしくて面白い、という事で、調査開始。
東京駅から東海道を西下し、「アホ」と「バカ」の境界線を探る。

が、そこで予想外の出来事が起こる。
名古屋駅前で第3の言葉「タワケ」が出現したのだ。
また、番組出演者から九州では「バカ」を使うという証言も出る。

「アホ」「バカ」の分布は東西で単純に二分割されるものではなく、もっと複雑らしい。
番組自体も予想以上の反響があり、「アホ」「バカ」分布の調査はさらに大掛かりに。
全国を対象にしたアンケートも実施した。

その結果、見えてきたのは様々な種類の人を罵倒する(あるいは逆に親愛の情を示す)言葉の分布。
そして、その様々な言葉は、京都を中心とした波紋のように、何重もの同心円状に分布していた。

それは民俗学者の柳田國男が「蝸牛考」で提唱した「方言周圏論」そのものであったのだ。

当初、番組の1企画であったものが、放送終了後も著者は、継続調査し、方言に関する学会で発表するまでになる。
本書は、のべ3年にわたる「アホ」「バカ」調査の過程と結果をまとめたもの。

カバーの裏に「全国アホ・バカ分布図」がついている。
「アホ」「バカ」という言葉ひとつを取り上げただけでも、日本各地で様々な表現の仕方がある、というは本書で初めて知った。
この分布図を見て、「アホ」「バカ」表現の様々な種類に思いを馳せたり、自分が住んでいた地域では、どんな言葉が使われていたのかを探すだけでも面白い。

ただ、すべての言葉が「方言周圏論」で説明できるものではないだろう。
言葉の種類によっては、ある場所(街道、川や山脈など)を境にキレイに分かれているものもあるかもしれない。

例えば、言葉ではないが、うどんのつゆの関東風と関西風は関が原が境界らしい。
関が原は中山道・北国街道・伊勢街道の交差する場所で、大軍が集まりやすい場所であったため、「天下分け目の戦い」の場所になったが、同時に物流の分岐点(もしくは交差点)でもあったためらしい。
言葉の分布にも影響を与えていそうな気がする。

「全国アホ・バカ分布図」は、そういう想像も広げさせる。


ところで、全国各地の「アホ」「バカ」に相当する方言に共通するものは、直接、人を罵倒する表現ではなく、何かに例えるケースが多い、というもの。
間抜けな(と考えられていた架空の)動物に例える、仏教の用語を用いて、中身の空虚さを表すなどの例がある。

昔、新聞記事か何かで、恋人に会えない苦しい気持ちを着物の帯をきつくしてしまった事に例えた和歌を欧米の人に紹介したところ、「なぜ、直接、”苦しい”と言わないのか」という反応が返ってきた、という記事があったのを(おぼろげな記憶だが)思い出した。
「婉曲的な表現」を好むのは日本人の国民性なのだろうか。
他の国の「アホ」「バカ」表現と比較すると、文化の違いが明確になったりして、面白いことだろう。

とにかく、こういう「庶民が普通に使う言葉」にこそ、お国柄が出てくるのだと思う。
だが、このような言葉ほど、今回の調査のような事がない限り、注目されることもなく、使われなくなるとひっそりと消滅してしまう。

建築家ミース・ファン・デル・ローエは
「神は細部に宿る」
と言ったそうだが、
「神は”どうでもいい事”に宿る」
とも言えそうだ。

あくまで「ときどき」ではあるが。
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