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本 デパートを発明した夫婦

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本-デパートを発明した夫婦
著者: 鹿島茂 (著)
定価 ¥820(税込)
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商品情報

出版社名
講談社
シリーズ名
講談社現代新書 1076
発行年月
1991年 11月
ISBNコード
9784061490765
版型
--
ページ数
238P
平均評価
(4.5)
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ブクレポ
2件

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鹿島茂 OFF

ブクレポ  ( ブクレポについて

ニックネーム: クロニスタ 投稿日:2017/01/03

祭と憧れ

年末年始には妙にデパートに行きたくなる。街の高揚した気分にのせられて、なんか買い物したくなるのだ。 というわけで、年始一冊目に選んだ本。


19世紀半ばのパリ、ブシコーとその夫人により世界初のデパート「ボン・マルシェ」が誕生した。それまでの買い物と言えば、必要なものを専門店に買いに行くというスタンスが普通で、店の扉をくぐったら最後、何かを買わなければいけない。何も買わずに出ていくなんてことは失礼千万。店と客の立場はどちらかというと対等というより店のほうが上。買い物慣れしていない客に対しては、値段を吹っかけてきたり、粗悪品を売りつける。なんか骨董店みたいだ。当時のパリの多くの人々にとって買い物は緊張感を伴う、ストレスでもあったのだ。


そんな買い物文化に革命をもたらしたのがボン・マルシェ。入店自由、退店も自由。商品を眺めるだけで、何も買わなくてもいい。それはまるで最新のモードを無料で観覧できる博覧会場。所有するなんてことは夢のまた夢の高級品も見るのは自由。今は無理でもいつかはと、上昇志向を刺激する展示構成。ストレスが伴う買い物という行為を、高揚感が伴うお祭りに変えたのがボン・マルシェ。突如現れた夢の国なのだ!


図版も多数あるので、その外観や内装の豪華さにも驚かされる。まるで王侯貴族の屋敷に招待されたかのような気分に客はなっただろう。
ゆったりとしたソファーでくつろげる休憩所、無料のドリンクバー、図書室、そして清潔な化粧室。そんな空間を庶民に無料で提供できる場所の出現は驚き以外のなにものでもなかった。

客だけでなく、そこで働く従業員もボンマルシェで働くことに誇りを持ち、一流の販売員たらんとして働くのでますます店の格も上がる。接客に満足した客がまた次の客を呼ぶので大繁盛した。


従業員の福利厚生にも力を入れ、無料の大食堂や従業員のための教育施設、従業員オーケストラの結成など文化事業をはじめる。客はボンマルシェで提示された一段も二段も上の生活スタイルに憧れを抱いて、足を運んでくる。そのためには従業員も一段も二段も洗練された生活スタイル身に着けないと説得力がない、との考えからだ。

プロの指導により力をつけた従業員オーケストラは、その後、常連客を招待しデパート内の広い空間を利用した無料のコンサートをはじめる。オーディオ機器などなく、オーケストラ鑑賞など裕福な一部の階級の特権でしかなかった時代に、疑似的だとしても庶民がオーケストラ鑑賞できる機会を提供したという点は画期的だ。そして招待客は、自分たちはもしかしたらアッパーミドルになったんじゃないかしら?と、優越感に浸り、日々の生活の活力とするのだ。


客はなぜデパートに足を運ぶのか、それは物を買うためではなく、高揚感とくつろぎを得るためだった。


そういえば去年、そごうで全く買う気もなかったコーヒーメーカーを衝動買いしてしまった。
デパートの高揚感に浮かされてしまったいい例だ。

ニックネーム: ランピアン 投稿日:2012/09/29

消費社会の幕開け

百貨店業界の苦境が久しく続いている。イオンなどの巨大ショッピングセンターに客を奪われているせいであろう。百貨店側も様々なアイディアで巻き返しに必死であるが、これは百貨店という存在が人々にとっての魅力を失ったことを意味しない。むしろ彼らの商売敵、イオンやイトーヨーカドーといったスーパーマーケットが「百貨店化」した結果なのである。かつて一介のスーパーマーケットに過ぎなかったイオンは、全国に驚くほど巨大なショッピングモールを矢継ぎ早に開業させている。周知のとおり、広大な店舗面積のうちイオンの本体たるスーパーマーケットの専有部分はごく一部で、その他の部分には多様な専門店や飲食店、娯楽施設等が入居しているのが特徴だ。堅実な経営手法で知られるヨーカドーも、イオンほど積極的でないとはいえ、やはり同様の商法を展開している。これらの巨大ショッピングモールは、様々な施設の集積、ことにカテゴリー・キラーと呼ばれる大手家電量販店、大型書店、玩具店等を擁することで、デパートのお株を奪う驚異的な品揃えを実現させてしまった。だがこの業態の強みは、その利便性だけにあるのではない。いかに品揃えが豊富でも、それが単に巨大な商店に過ぎないのなら、現代の消費者がわざわざ車を飛ばして郊外まで駆けつけるはずがない。

巨大ショッピングモールの成功は、いわばスーパーのテーマパーク化、巨大な駐車場を備え、商業施設にアミューズメントやカルチャースクールまでをも組み合わせて、明確な購買目的のない人々まで来店させてしまうという、いわば劇場型ビジネスモデルに拠っているのである。巨大なイオンのモールで日がな一日過ごす人々のことを、今や「イオニスト」と呼ぶそうだ。だがこうした商法、つまり売っている商品そのものよりもイメージで消費者を誘引し、買う気のない客でもとにかく来店させ、あわよくばリピーターやファンにしてしまおうというこの商法自体、実は百貨店本来のビジネスモデルの換骨奪胎なのである。そうした意味では、百貨店という存在は依然として高度消費社会の玉座に君臨しているのだともいえる。本書は、こうしたデパート商法を案出し、パリの一商店を世界最初の百貨店「ボン・マルシェ」にまで育て上げた天才的商人、アリスティッド・ブシコーと、その賢妻メアリーの一代記である。といっても物語の主役は彼らの店、パリ7区に今も健在の「ボン・マルシェ」であり、夫妻が次々に繰り出す経営のアイディアなのだが、幼少時からのデパート好きを自任し、仏文学者にして名随筆家でもある鹿島茂の流麗な筆のおかげで堅さが取れ、読みものとしても一級の面白さを持っている。しかし驚かされるのは、とても19世紀の話とは思えないブシコー夫妻の先進的な経営手法である。かつてのフランスの商店は、一旦敷居を跨いだが最後、何も買わずに出てくることはできなかったのだという。しかも商品に定価はなく、高値で売りつけようとする店員との煩瑣な交渉を経なければならなかった。「ボン・マルシェ」は、こうした古色蒼然たる商店の対極にある商法を確立した。大量仕入れと定価販売による商品価格の低廉化、そして何よりも、従来は「苦行」でもあった買い物という行為を「娯楽」に変ずること、つまり商品を買おうが買うまいが、とにかく顧客を店舗に引き寄せ、今は買う気のない客も決して粗末には扱わず、時間をかけて潜在的な顧客を養成するという、画期的な商法を編み出したのである。パリ万博にヒントを得た巨大かつ豪華な店舗、無料の読書室や清潔なトイレ、ライフ・スタイルの提唱、店員のマニュアル接客や文化戦略など、まるで現代の流通・小売業の主要な経営手法が既に出揃っている感がある。自然主義文学の大家、『居酒屋』や『ナナ』で知られる文豪エミール・ゾラは、1883年、「ルーゴン・マッカール叢書」の一巻として『ボヌール・デ・ダム百貨店』を刊行し、十九世紀フランスに早くも開花した消費社会の実相を描破した。この作品のモデルの一つとなったのが、他ならぬこの「ボン・マルシェ」である。本書がビジネス書として言及されることは稀だが、流通や小売業に携わる人々にとっても、読んでおいて損はない一冊だと思う。本書を一読すれば、高度消費社会におけるビジネスの基本原理―いかに商品を買わせるかではなく、顧客をいかに買う気にさせるか、それも当面必要がないものまで―を、もっとも素朴な姿で見ることができるからである。
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