pagetop

本 犬神家の一族

ほしい!に追加 twitter
本-犬神家の一族
著者: 横溝正史 (著)
定価 ¥734(税込)
BOOKFANポイント: 34 pt
or
Tポイント: 20 pt (Yahoo!ウォレット決済利用時)

商品情報

出版社名
角川書店
シリーズ名
角川文庫 金田一耕助ファイル 5
発行年月
1996年
ISBNコード
9784041304051
版型
--
ページ数
414P
平均評価
(4)
: 1件
: 4件
: 2件
: 0件
: 0件
ブクレポ
2件

新刊お知らせ登録一覧へ »

横溝正史 OFF

ブクレポ (レビュー)

ニックネーム: ランピアン 投稿日:2016/03/22

愛を感じているから 砂の音も愛おしい

昨今、新聞紙上などで、よくテレビドラマの低視聴率が話題になっている。インターネットなど種々の娯楽の発達により、ドラマを観る人自体減っているのだろうが、作品に対する視聴者の視線がシビアになっていることも、原因の一つであるような気がする。


先頃まで愚妻が観ていた連続ドラマも、人気作家の原作なのに打ち切りが囁かれたほど低調だったそうで、なんでも瓜二つの人間による入れ替りトリックが非現実的だとか、とかくの批判があったようだ。


だとすれば、現代のテレビマン諸氏はまことにお気の毒であると思う。昔のドラマの筋には瓜二つだの双子の兄弟姉妹だのといった御都合主義はありふれていたし、観る側もうるさいことを言わずに許していた。今の視聴者は、意外性があって波乱に富んだストーリーを、だが荒唐無稽はご勘弁とくるわけだから始末に負えない。


現代の若者に昔のドラマ、例えばかつて一世を風靡したドラマ『横溝正史シリーズ』なぞ観せた日には、軒並み落第点が付くであろう。正史の戦後の作品は、さしづめ御都合主義のオンパレードだからである。


そのオンパレードの記念すべき嚆矢となったのが、ご存知『犬神家の一族』である。本書を読んだこともなければ映画もドラマも観たことがないという若い衆も、不気味な白いゴムマスクをかぶった「スケキヨ」や、湖の水面から二本の白い足がにょっきり逆さまに突き出している場面なら知っているだろう。


映画公開は1976年、テレビ化は翌1977年、ともに大ヒットとなり、もはや過去の人とみなされていた横溝正史は一躍大流行作家となった。


出版・映画界の風雲児、角川春樹の商才が如何なく発揮された結果だったが、これはある意味で驚異的といってよいことであった。以下に記すとおり、本書『犬神家の一族』の物語は、70年代後半にあっては時代錯誤としかいいようのない代物だったからだ。


戦争終結から数年後、信州を地盤とする犬神財閥の総帥、犬神佐兵衛が鬼籍に入った。生糸で莫大な財をなした佐兵衛の死に際して遺族たちの関心は、他でもないその巨財相続のゆくえである。佐兵衛は遺言状を遺していたが、それは指定した血族すべてが揃わない限り公開しないこととされていた。


終生本妻を持たなかった佐兵衛には、それぞれ母親を異にする三人の娘、松子、竹子、梅子がおり、その娘たちは佐兵衛の相続人たりうる息子を一人ずつ儲けていたのだが、出征していた松子の長男、佐清の生死がいまだ不明なのだ。


そんな折、ひとりの風采の上がらぬ青年が当地にやって来る。私立探偵、金田一耕助である。弁護士事務所の金庫に保管された遺言状の内容を知った同事務所の所員若林が、犬神家に凶事が出来するとの予感に駆られ、いわゆる本陣殺人事件や獄門島連続殺人の解決で知られる金田一を呼び寄せたのである。


そして若林の予感は、彼にとって最悪の形で的中した。金田一が到着するや、若林は毒殺死体となって発見されたのだ。さらに矢継ぎ早に、犬神家に寄寓する美女、野々宮珠世が何者かに狙われるに及んで、金田一は若林の不吉な予感が現実のものとなりつつあるのを知る。


そして、ビルマ戦線で行方不明となっていた佐清が突如として帰国、親族一同の見守る中でついに犬神佐兵衛の遺言が公開されたとき、親族と関係者一同は、その異様な内容に慄然とした。


佐兵衛の事業と全財産は、佐兵衛の恩人の孫である野々宮珠世に贈られる。ただしそれは、彼女が佐兵衛の三人の孫、すなわち腹違いの三姉妹から生まれた三人の息子たちのいずれかを配偶者に選んだ場合に限る、というのだ。


首尾よく珠世の夫となれば、佐兵衛が遺した莫大な財産を手中にできる。しかも、元来母を異にする三人の娘たちの間の反目には只ならぬものがあった上に、珠世は絶世という表現が大袈裟でない美貌の持ち主だった。骨肉の争いが起こる条件は、揃いすぎるほど揃っていたのだ。


そしてついに、犬神家を舞台とする忌まわしい連続殺人の幕が切って落とされる――。


久しぶりに再読し、ついでに映画も再見した。再読に耐える作品ではあると思うが、作中に問題の御都合主義が横溢しており、謎解きの興味より通俗味が勝っているため、正史の後期作品中でも評価が高くないのはやむを得まい(もっとも、近年再評価の動きもあるそうだが)。


従って、どうしても映画版の方が完成度が高いという印象を受けてしまう。物語の展開上余計な枝葉は切り落とされ、犬神家の事業を製糸業から製薬業へ変更し、そこに差す戦争の不吉な影を暗示することで、当主である佐兵衛に原作にない悪魔的な人格を与えているなど、脚本がよく練られているのだ。


それにしても、私が以前から不思議に思っていたのは、なぜ横溝ミステリの第一回映画化作品として本書が選ばれ、謎解きとしての評価が本書よりも高い、例えば『獄門島』のような作品が選ばれなかったのかということだったのだが、それも今回の再読で得心がいった。


そもそも『犬神家の一族』と『獄門島』では、物語の基本的な構造が大きく異なっている。『獄門島』では、地方の旧家の前近代的な陋習が殺人事件の発端となるが、犬神家は旧家でも名家でもなく、佐兵衛一代で財をなした成金でしかない。


また、三人の娘の母が異なるという異様な家族構成も、佐兵衛が生涯で唯一真に愛した女性と結ばれなかったという悲劇の産物であり、しかも映画版では、この連続殺人自体、愛し合う者同士を結び付けてやりたいという佐兵衛の深謀を、犯人が無意識に代行したのだという解釈がなされている。


つまり、この物語のモチーフは、『獄門島』や『女王蜂』におけるような「家制度の桎梏」などではなく、大野雄二の手になる有名な主題曲が『愛のバラード』と題されているように、個人としての男女の愛なのである。要するに『犬神家の一族』は、映画化された他の横溝作品に較べ、物語のタッチが格段に明るいのだ。


この明るさこそ、角川が本書を映画化第一作に選んだ理由だったのだろう。さらに映画版では、石坂浩二演じる金田一の春風駘蕩たるキャラクターを挟み込むことで、連続殺人の陰惨さも和らげられているから、人間関係のどろどろとした怨念などとは無縁になりつつあった70年代後半の日本人にも、比較的容易に受け入れられたはずだ。


角川春樹の炯眼に驚かされると同時に、推理小説としての完成度に関わらず、本書がやはり日本ミステリ史の金字塔に違いないことを再認識させられた、今回の再読であった。

ニックネーム: マーブル 投稿日:2010/07/03

横溝の作品と言うと、再三ドラ…

横溝の作品と言うと、再三ドラマ化・映画化しており、なかでも子供のころに見た古谷一行バージョンの印象がかなり強い。「犬神家」と言えば、介清と湖から突き出た死体の足が忘れられない。文章としての作品の前に、映像が思い浮かぶ。
映像の印象で、オドロオドロしいイメージばかり強い横溝だが、小説として読んでみると、もちろんそう言った魅力もあるのだが、本格推理としての定番トリックを盛り込んだ作品としての性格もある。
覆面の男、人物の入れ替え。過去から積み重なった恨み。海外推理小説の古くからあるトリックと、和風の「怨念」をミックスして出来上がっているのが横溝。読んでみると金田一の存在が、かなり救いの部分となっている。
うれしい全品送料無料♪全商品5%ポイント還元!<a href="index.php?module=ecrlist&action=plist&it=BK"target="_parent">▼新刊・予約はコチラ!</a>
ご注意!ラッピング、お届け日の指定は承れません!
大量一括注文窓口はこちら!
出版社共同企画!もれなく100ptプレゼント!
BOOKFANのツイッターをフォローする♪
BOOKFANキャラクター大集合!LINEクリエイターズスタンプ配信中☆
コミック全巻セットはこちら★
特集一覧へ
ジャンルランキング

新書・文庫のランキング

応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱

呉座勇一(著)


君たちはどう生きるか

吉野源三郎(著)


バカ論

ビートたけし(著)


ランキング一覧へ
ブクポン
アンケートに答えてポイントゲット!
アンケート一覧へ