ニックネーム:
こたろう
投稿日:2017/03/16
物語は佳境にさしかかります。
こうでなくては、と感じるとおりに物語は進んでいきます。
チンピラに絡まれかつての腕をふるって追い返した四天王でしたが、広岡が相手にした若者だけが様子が違っていました。ライセンスを持っているらしい明らかに腕の立つ選手でした。
が広岡のクロスカウンターで倒された彼は四人が何者であるのか調べてもう一度訪れてきます。
彼は試したいのだと言います。あのパンチをもう一度。
そして彼が黒木祥吾という高校チャンピオンからプロ入りして七戦七勝と戦績を残しながら拳の負傷で試合に出ていない選手なのだと知ります。
が実際は圧力がかかった不誠実な判定で勝てたことに失望してボクシングを辞めてしまおうと思っていたのでした。それがかつての四天王のパンチを目にして興味を惹かれグローブ持参でやってきたのでした。
そして黒木は言います。「ボクシングを教えてほしい」と。
迷いながら受け入れた四天王は庭に練習場を作り彼を鍛えていきます。
このあたりの過程が定番ですがとてもいいです。
一つ一つステップを踏んで発見をして、成長していく若者、そして鍛えることで過去を振り返り自らの時間と存在意義をもう一度確かめるかつての若者たち。
さらさらと読めてしまいますが、面白いのです。
そして何かわけありだなと、思っていた不動産屋の佳菜子の過去も見えてきて、本館的に黒木はボクシングに復帰することに決まり、四天王が得意としていたパンチを伝授されます。
佐瀬のジャブの三段撃ち、藤原のインサイド・アッパーと必殺のパンチを習得しかつて広岡たちが所属していた真拳ジムにスパーリングの相手をつとめに出向きます。
そこで見せたインサイド・アッパー一発でKOされた将来を嘱望されていた選手、大塚が黒木とのマッチメイクをもとめてきます。
飛び散る汗と皮のこすれる音、靴のキュッというこすれる音やパンチングボールの弾ける音などが聞こえてきそうな「ボクシング小説」のエッセンスだけで作られた物語だと思いました。
どこか夢物語ででもそれがよくて、ついつい読み進めてしまいます。
大きな相手に立ち向かっていく黒木と広岡たち四天王、その先にまっていた過酷な運命。
うーん、切ない幕切れもちょうどいい感じで、まいりました。
誰ですか、沢木耕太郎をノンフィクション作家だなんて言っていた人は、それ以外は認めないなんて言っていた人は……