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本 幽霊塔

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本-幽霊塔
著者: 江戸川乱歩 (著)
定価 ¥2,160(税込)
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商品情報

出版社名
岩波書店
発行年月
2015年 06月
ISBNコード
9784000254199
版型
--
ページ数
--
平均評価
(4)
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ブクレポ
1件

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江戸川乱歩 OFF

内容紹介

時は、大正のはじめ。
26歳のまっすぐで血気盛んな青年北川光雄は、絶世の美女、野末秋子に出会った。
場所は、九州・長崎県の片田舎にある幽霊塔と呼ばれる時計塔。
惨殺された老婆が幽霊となって徘徊すると噂されるところだった。
秋子は、そんな場所で何をしようとしていたのか。
秘密を抱えた秋子に、光雄は惹かれていき…。
夥しい数のクモを飼う男、「救い主」と呼ばれる不思議な医学博士、猿をつれた太った女―怪しい人物たちが二人の周囲で暗躍する。
そして時計塔の秘密とは?江戸川乱歩の名作が、宮崎駿のカラー口絵とともに蘇る!波乱万丈、怪奇ロマン。

※本データはこの商品が発売された時点の情報です。

ブクレポ  ( ブクレポについて

ニックネーム: ムーミン2号 投稿日:2015/06/13

宮崎様、映画化してはいかがですか!

岩波書店の広告に江戸川乱歩の『幽霊塔』の発売が告知されていたのを見て、「なんで今さら乱歩さんのしかも1冊だけ刊行するのかなぁ?」と思っていたら、宮崎駿さんがカラー口絵を…、という宣伝!!
おお、ああ、そうなんだ、と発売を楽しみにしていたが、同書店のHPではなかなか表紙の写真がアップされない(発売前日にもない、なんてこといっつも。発売後も<撮影中>ってこともしばしばある)。
やっと表紙の写真がアップされたのを見ると、表紙も宮崎さんの絵が使われているようだけども、ちょっと小さいなぁ、と思いながら、書店で見てみると、表紙もさることながら、口絵がなかなかすごい。
いや、あれは口絵とは趣が違っている。
宮崎さんが60年前に出会った『幽霊塔』とのエピソードが漫画で描かれる。その幽霊塔を宮崎流にイラスト化したものはまさに宮崎ワールド。「ルパン三世 カリオストロの城」のルーツがこの『幽霊塔』にあるというのも納得だ。映像化したらさぞ面白いだろうなぁ、なんて思ってると突然、「映画にするならこの位の方がイイと思う」というセリフが挟まれる。宮崎さん、映画にしたいんじゃないの? と思っていると、欄外に「えいがはつくりません」と書いてあって…。まぁ、ムリは言えませんが。けど、そのあと、絵コンテで描かれる幽霊塔を見ると、余計にアニメにしたらどうだろう…、と思わされるし、宮崎さん、ホントはアニメにしたいんでしょ! なんて思わされる。
絶世の美女・秋子は表紙に描かれている女性だが、まさに宮崎さんの描く女性。
1ページ毎に「幽霊塔」へのオマージュがギッシリ詰め込まれた口絵は、よくよく見ないといけないが、見れば見るほど、読めば読むほど、面白い。後半では乱歩さんの『幽霊塔』のもとになった黒岩涙香の本、さらに涙香が元にした作品をも紹介されている。この口絵だけで16ページもあるが(当初の岩波の宣伝では口絵10ページということだったはず…まぁ、多くなるのはこの場合、大歓迎)、本編を読んだ後にもう一度口絵を見ると、面白さが倍増する。


さて、肝心(かどうかは読む人の判断になるか?)の本編であるが、舞台は長崎。先ごろ地方裁判所の検事総長を辞した叔父が購入した時計塔(別名「幽霊塔」)で怪事件が重なるように起こる。
主人公は北川光雄という高等遊民で、叔父の依頼でこの時計塔を検分しに来た時に出会った野末秋子の凛とした美しさに打たれ、次第に愛し始める。
ところが、この時計塔には秘密が宿っており、その秘密の中心人物・秋子も当然巻き込まれながらの殺人事件、容疑、秋子を中心にした恋愛感情をベースにした虚々実々の駆け引き、過去へ遡る秘密の露見等々が展開される。
光雄という男性は、20代中ごろから後半くらいなのだろうが、それほど鋭くないオツムではあるものの、義侠心と勇気と強い身体を持ち合わせた好人物に描かれている。
それに比して、栄子という光雄の許嫁(秋子に意地悪をしているうちに、突然いなくなり、首なし死体で発見されるも、それは栄子じゃない、ということになって…ゴチャゴチャ)の我が儘、ひねくれた心、意地の悪さは並大抵のものではないのだが、その栄子に対してさえ、時に光雄は憐憫の情を持つのだから人がいいにも程がある。
従って光雄は探偵役にはならない。長崎県警の森村刑事が鋭い探偵として物語の半ばから登場するが、それも狂言回しにすぎないし、最後は事件の解決にはかかわらない。


事件の顛末は秋子を中心に据えて光雄の直情径行的行動力によってダイナミックに展開していき、時計塔の秘密と隠された財宝、そこに至る道のヤヤコシさ、などが味付けとなって大団円を迎える。
最後はめでたしめでたし、になるのだけど、時計塔の精密なカラクリがそれほどつまびらかにされるわけでもないし、さっきも触れたように探偵さんは途中でいなくなるし、犯人たる人物は猿と対決してあえない最期となるし、その猿を飼っていた人物も途中でいなくなるし、などいろんな要素が盛り込まれるものの、何となく消化不良気味なのは、時代を考慮すれば仕方のないことなのかも知れない。
物語は常に思わせぶりたっぷりに展開される。「…これが後になって○○となるとはその時は分からなかった。」「この時、○○していたらあんな事件は起こらなかったかもしれない」 などなど、中盤からは各章ごとに、といえば言い過ぎだが、何度も繰り返しこのフレーズがでてくるものだから、先が気になると言えば気になる、ちょいと鬱陶しいといえば鬱陶しい。多分、当時はこうやって展開させることで読者の興味を持続させていたのだろう(宮崎さんが「貸し本屋」で借りて読んだ、とくだんの口絵で明かしているので、本編の書き振りも何となーく、分かる)。


ちょっとばかしエロく、ちょっと以上にグロく、おどろおどろしい雰囲気と謎の多い建物、絶世の美女には陰と人に言えない秘密・悩みがあり、それを知る人物の脅しなども物語を彩るのだが、乱歩さんは黒岩涙香に影響されており、とさかのぼれば明治期の新聞掲載の翻案小説へとたどり着く。


既に乱歩さんを多読されている方には今さらだろうが、宮崎さんの口絵付の本書はこれから親しもうとする(ちょうどワタシのような)乱歩未読者にはお値段以上の価値がある…かも知れない。
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