pagetop

ブークスによる出版社インタビュー企画第2弾 アルテスパブリッシング



アルテスパブリッシングは、
音楽専門書籍をメインに発行する出版社です。

「音盤考現学」「音盤博物誌」という音楽批評本では、サントリー学芸賞&吉田秀和賞をダブル受賞されました。今回は、代表の木村さん・鈴木さんをはじめとするスタッフの皆様にインタビューをいたしました。ほのぼのとしながらも、こだわりのある皆さんです。

 ●「音楽書籍」という分野に特化した出版社
 ●好みの音楽
 ●出版物と音楽
 ●本作りへの姿勢
 ●村上春樹と「雪かきくん」?
 ●意外なアイテム
 ●今後のアルテスパブリッシング
 ●アルテスパブリッシングの書籍はこちら

「音楽書籍」という分野に特化した出版社

音楽関係の本を中心に出版されていますが、
そういった出版社を立ち上げられたきっかけはなんですか?

もともと二人とも音楽之友社という出版社にいまして、
そこが音楽の専門出版社だったので、“音楽”のことしかやったことがなかったんです。

と言いつつ、最初に出版した『村上春樹にご用心』は音楽書ではないんですけど(笑)。
少しずつジャンルを広げてみたいなって気持ちはありますが、
ベースの部分では"音楽"を絡めていきたいですね。

でも、音楽書って、すごく”面白い”んですよ!

“面白い”とは?

インタビューの模様

音楽って本来聴くものでしょう。それを文字にするなんて矛盾しているって思われがちなんですけど、僕自身そういった本を読むのが好きだし、それによって音楽の聴き方が変わることもあるし、「矛盾していることにあえて挑戦された本」だからこそ、見えてくることがあると思うんですよ。

その一番根底にあるのは「音楽が好き」っていう単純なことなんですけどね。

音楽が好きで、本が好きなんです。

その二つで仕事になるんだから、すごく良い会社だと思います(笑)。

トップに戻る

インタビューの模様

好みの音楽

お好きな音楽のジャンルはありますか?

とにかくなんでも聴くので、それが一番困る質問なんですよ、実は。

僕はジャンルにかかわらず、ある曲がいいと思ったらそこから、
同アーティストで別の曲とかって聴きにいくタイプなんですが……

僕は子どものころはロック少年で、ビートルズ、ストーンズ、ツェッペリン…と王道で育ったんですけど、学生時代からだんだん広がっていって、サンバやモダン・ジャズとかアフリカのポップスとか民族音楽とかどんなジャンルのものでも聴くようになったんです。就職してからは聴くことが仕事になっちゃいましたから、ますます果てしなくなってしまって。強いてあげればわりと苦手なのはオペラと……

あ、僕もです(笑)

あと典型的な様式メタルやハードコア・パンクとかはちょっと苦手ですね。

今、マイブームの音楽はなんですか?

そのとき作ってる本のジャンルのものを聴くことが多いんですよ。たとえばピーター・バラカンさんの『魂(ソウル)のゆくえ』を作ってる時は、スティーヴィー・ワンダーを久しぶりに聴き直したり、ソウルばっかり聴いてました。

ちょうど今は、校了直後ということもあって、ニュートラルに戻った状態ですか?

そうですね。昨日は久しぶりにCDレンタルショップに出かけて、メジャーなJ-POPを何枚か借りてきたところです (笑)。

トップに戻る

出版物と音楽

ふだん何気なく聴いている音楽がきっかけになって「こんな本をつくりたい!」って思うことはありますか?

たまにそういうこともありますね。

日常生活で何気なく聴いていて、「あ、“この曲”と“あの人”だ!」という感覚ですか?

企画はそういうふうに“なにもない所”から思いつくより、どちらかというと著者とお喋りしているうちに、そこからだんだん膨らんでいきますね。

お付き合いをさせていただいている方って、ミュージシャンよりも音楽ライターや音楽評論家のほうが多いんですね。だから、音楽よりも書き手から発想していることが多いんです。「こんな評論を展開するんだ! この人に本を書いてもらいたい!」っていうふうに。

つい先日も、ある声楽家の方とお会いして、何もテーマを決めずに雑談しているうちに、作る本のテーマが決まりましたしね。

なるほど、本作りに関しては、やはり出版社としての目になるわけですね?

そこは半々ですね。出版社も営利企業ですけど、あまり会社としての意識が強いと、「こんなテーマで売れるのかな?」って考えすぎてどんどんテーマがそれてしまったり、その企画自体がポシャっちゃったりしますからね。だから、出版社としての意識はもちながらも、生まれてきそうな企画の芽をつぶさないようにお話してますね。

自分の好きなミュージシャンをテーマに本を作りたい、という思いもありますけど、そういうのは求められるクオリティがものすごく高いんですよ。

音楽で成功されている方って、「音楽」だけで完結されている存在ですから、そこに加えて「本を出す意味」を持たせないといけませんしね。

トップに戻る

本作りへの姿勢

インタビューの模様

いろんなお話を聞かせていただいて感じたのは、本作りってすごくバンド活動に似てますよね。

あ、なるほど、うまい例えですね!

ありがとうございます!(笑)なにかこう、作ることに対してすごく楽しんでらっしゃる感じが伝わってくるんですよ。

たんに作っているだけで済んだら、もっと楽しいんですけどね(笑)

先日、昔の上司に会う機会があって、その時に「君たちは“売れ線”の本も作れるんだろうけど、作らないよねぇ……」と言われたんです。僕の中では「自分が好きなものは、他人も好きになるに違いない」っていう根拠のない、確信があるんですね。僕もバンドやってたのでわかりますけど、「自分の好きなもの」ってだれかと共有したくなるじゃないですか。

デモテープを作ったから聴いてよ!っていう、まさにバンド活動ですよね。

そうそう! やっぱりそこが基本だと思うし、それで1年半続けてみて、それでやっていけるっていう手ごたえは掴めました。

好きな音楽を、好きな本にして、それを色んな人と共有して、食べていけるって……

まさに“理想”ですね!

トップに戻る

村上春樹と「雪かきくん」?

本づくりにあたって大事なことっていろいろあると思うんですが、なかでもここ! っていう重要なポイントはありますか?

そうですね……たとえばカバーのデザインを考えるのはすごく好きです。あのデザイナーさんに装丁してもらったらきっとこうなるだろうなとか、あれこれ想像しながら楽しんでます。

村上春樹にご用心

デザイナーを決めるにあたって、印象深い作品ってどれですか?

やはり会社を作っていちばんはじめに出せた『村上春樹にご用心』ですね。こういうシンプルなものじゃなくて、もっと表紙いっぱいにタイトルが広がっている案なんかもありましたし、タイトルも最初は『雪かきくん、世界を救う』だったんですよ。

それがまた、どうしてこの表紙に決まったんですか?

そもそも村上春樹の評論書なので、ビジュアル要素がなにもないんですよね。なので、じゃあ、雪かきしている絵はどうかと。

村上春樹の評論書なのに「雪かきくん、世界を救う」というのは?

村上春樹の作品の中で、「かえるくん、東京を救う」っていうのがあるのと、「ダンス・ダンス・ダンス」っていう作品のなかで、“文化的雪かき”っていう言葉を使ってるんですよ。それをもじって『雪かきくん、世界を救う』なんですけど、それだと村上春樹を読んだことのない人にはわかりづらいじゃないですか。あとは、書名に“村上春樹”がはいってれば検索されやすいので、著者が『村上春樹にご用心』と決めてくれたんです。じつは大瀧詠一の曲のもじりで深い意味はないんですけど(笑)。でも、「雪かきくん」は活かしたかったので、イラストを書いてもらうデザイナーを探そう、っていうことで、みんなで本屋に走りました(笑)。そうやってお願いしたイラストレーターがフジモトマサルさん。今たいへんな人気のある方なんですよ。

あー、もう光景が浮かびますね(笑)。「オレ、この棚からこの棚をみていくわ!」って感じですよね。

まさに、その通りでした(笑)。あとは、デザイナーさんと一緒に「タイトルは中央? 右上?」「雪を散らしてみたら?」とあーだこーだ言ってるうちに、「あ!これだ!」って全員が一致したのが、このデザインなんです。

トップに戻る

『音盤考現学』『音盤博物誌』の表紙と帯

意外なアイテム

『音盤考現学』『音盤博物誌』の書籍は、帯が何種類もありますよね?

この2作は先日「吉田秀和賞」と「サントリー学芸賞」をいただいたので、それを記した帯に作り直したばかりなんです。

帯ってやっぱり重要なアイテムですか?

重要ですね。内容が一目でわかりますし。帯って日本独特の文化ですしね。

あ、そうなんですか?

帯を見ると、出版社がその本にどれくらい力を入れてるかがわかったり……

あー、なるほど!それは今後、本を買うにあたっての良い情報になりますね(笑)。

しおり

あと、アルテスでは“しおり”を付けるのがお約束ですね。

もれなくですか?

ええ、アルテスの本には必ず、その本のコンセプトにあわせてデザインしたしおりが挟まってます。ブログで「しおりかわいいよね!」って読者の方が書いてくださってて、あれは嬉しいです。

トップに戻る

今後のアルテスパブリッシング

これからのアルテスさんとしての目標はありますか?

やっぱり“バンド”としては、メジャー・デビュー!かな?(笑)

そこ行きますか? コアなファンが離れていきませんか!?(笑)

今のは言ってみただけです(笑)。目標っていうのは、あまり考えてないんですよ。

でも、今の温度を保ちつつも大きなステージに上れるに越したことはないですよね?

『ハリー・ポッター』のような本が出せたらいいなと思わなくもないですが(笑)。

でもベストセラーを出すことを目標にはしてません。

好きなジャンルって固定化しやすいと思うんですけど、アルテスが出す本ならという理由で手にとってもらって、それがきっかけになっていままで縁のなかった音楽にも手を出してくれるといいなっていう気持ちはあります。

ぼくは批評に力を入れたい、という思いもあります。それからアルテスの本をきっかけにして、たとえばコンサートとか旅行とか、音楽の世界を広げてくれたらいいなって思います。

アルテスパブリッシングの皆さま

アルテスパブリッシングの皆さま、ありがとうございました。

【関連リンク】

アルテスパブリッシングHP

http://www.artespublishing.com/

トップに戻る

アルテスパブリッシングの書籍はこちら サントリー学芸賞&吉田秀和賞ダブル受賞!!

音盤考現学

音盤考現学

片山 杜秀
1,785円

音盤(ディスク)に森羅万象を観る男、ファン渇望の音楽論集第1弾。
武満、黛、團、伊福部、西村、細川、川島からブーレーズ、ベリオ、ノーノ、ライヒ、タン・ドゥンまで──現代音楽の荒野に炸裂する批評の絨毯爆撃!
『レコード芸術』の人気連載、ついに単行本化!

音盤博物誌

音盤博物誌

片山 杜秀
1,995円

シューベルトを近眼派音楽の夜明けと断じ、金満的ヴィブラートの淵源はクライスラーにありと喝破、信時潔から坂本龍一に至る隠された楽統を暴き出し、ショスタコと恋愛映画の意外な親和性を解明する?音盤の博物学者・片山杜秀が渡り歩いた傑作・問題作。『レコード芸術』誌連載の後半50本を完全収録。

村上春樹にご用心

村上春樹にご用心

内田 樹
1,680円

メディア、ブログで大反響、だれにも書けなかった画期的なハルキ文学の読み方!
村上春樹はなぜ世界中で読まれているのか? 『風の歌を聴け』から『アフターダーク』までを貫くモチーフとはなにか? なぜ文芸批評家から憎まれるのか? うなぎとはなにか?

クラシックでわかる世界史

クラシックでわかる世界史

西原 稔
2,520円

ルターの宗教改革から第一次世界大戦終結まで、激動のヨーロッパを生き抜いた作曲家たちは、時代の真実を音楽に刻み込んでいった──名曲が生まれるとき、歴史は動く。
音楽史でいえばバロック前期から後期ロマン派までの時代の音楽を、各時代におけるさまざまな外的要因からみることによって、現代に残された数々の名曲に秘められた真実の歴史を読み解く。

魂のゆくえ

魂のゆくえ

ピーター・バラカン
1,890円

ソウル・ミュージック・ガイドの決定版、待望の復活! 曽我部恵一さん推薦!
ゴスペル、R&Bからモータウン、サザン・ソウル、ニュー・オーリンズ、ファンク、そしてヒップ・ホップ、ネオ・ソウルまで……60年代からこよなく愛し続けてきた著者が語るソウル・ミュージックの歴史とスターたち、名曲と名盤。
大幅にヴァージョン・アップした新版。最新のCDガイド179枚、DVD・書籍ガイド付き

image image image
八橋検校十三の謎

八橋検校十三の謎

釣谷 真弓
2,100円

箏曲に革命を起こした盲目の天才音楽家の素顔にせまる!
箏の代表曲「六段の調」を作曲し、新しい調弦法や形式を次々に創案、京都銘菓にも名を残す八橋検校──。謎解きを楽しみながら読む、初めての伝記!

「at武道館」をつくった男

「at武道館」をつくった男

和久井 光司
1,680円

エアロスミス、チープ・トリック、ザ・クラッシュ、ジャニス・イアンなどを手がけたソニー・ミュージックの名物ディレクター、野中規雄の半生──洋楽ロック/ポップス黄金期のレコード業界の舞台裏と、団塊世代の幸福なキャリアを描く書き下ろしドキュメンタリー。

学ぼう指揮法 Step by Step

学ぼう指揮法 Step by Step

山本 訓久
2,100円

コーラス、吹奏楽、オーケストラなどの指揮者、指導者必携!
バトンテクニックの基礎から各種の編成、拍子、表現まで実践的に解説。最終章では「展覧会の絵」をはじめ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの交響曲に挑戦!

image image image
無伴奏

無伴奏

小沼 純一
1,995円

バッハをはじめとする無伴奏ヴァイオリンの名曲たち──
そこに屹立するイザイの「無伴奏ソナタ」を中心に、ひとりで音楽をすることの孤独と歓びに向き合う。

バレンボイム音楽論

バレンボイム音楽論

ダニエル・バレンボイム (著)
蓑田 洋子 (訳)
2,520円

パレスティナ自治区での奇跡のコンサートを実現させたマエストロが、サイードとの共著『音楽と社会』ののちに到達した思想がここに結実。不条理に満ちた時代に音楽による希望を力強く謳いあげる。日本版オリジナルの序文付き。(解説・年譜:岡本 稔)

聴いて学ぶアイルランド音楽

聴いて学ぶアイルランド音楽

ドロシア・ハスト (著)
スタンリー・スコット (著)
おおしま ゆたか (訳)
2,625円

セッション、歴史、ダンス・チューン、楽器、うた、詞……CDを聴きながらアイルランド伝統音楽のエッセンスを知ろう!
オックスフォード大学出版局による入門書、待望の邦訳。
付録CDにはルナサ、アンディ・アーヴァイン、ケヴィン・バークらの貴重な未発表音源を含む27曲を収録!

image image image

トップに戻る